自分で手続きをしたら不支給になった場合


 裁定請求の結果「不支給」という通知が届いた場合、不服申し立てを行うか再請求か、もしくはそれを同時に行うか、それぞれの状況により対応策が異なってきます。
 審査請求は処分を知った日の翌日から3か月以内に請求可能です。審査請求は、口頭または文書でできますが、通常は文書で行います。お住まいの都道府県厚生局の社会保険審査官に電話をし、審査請求用の用紙を取り寄せます。
*「知った日」とは通知書が送達され社会通念上通知を現実に知ることができる状態に置かれた時を指します。

 

 不支給になった理由

 不服申し立てを行う場合、まずは不支給の原因をしっかりと調べる必要があります。
具体的な不該当理由を年金事務所に確認し、必要であれば「障害年金の診断書及び病歴・就労状況等申立書のコピー」を入手します。

不支給理由
①障害年金の障害等級に該当しなかった
②初診日が特定できなかったため
③診断書に記入された傷病での初診日における納付要件が満たされていなかった

①の場合
 診断書は現在の症状がしっかりと反映されたものであるかどうか、さらに労働能力についての記載内容等を確認します。
診断書の内容と現症との間に相違(実際より症状が軽く記載されている)がある場合は、医師に「日常生活の困難さ」や「職場で受けている配慮等」を積極的に伝え意見書の作成を依頼します。
*明らかに現症を反映していない場合は不服申し立てではなく再請求する方が無難です。若しくは審査請求と再請求を同時並行で進めてみてもいいかもしれません。審査請求の結果が出るのは8か月以上先です。再請求の方がはるかに早く結果が出ます。
*決定通知書以外に文書や物件を証拠として提出する場合はそれらの名前等を列記し添付します。
 ご相談を受けた際に「提出した診断書の内容が軽く書かれていたから不支給になった」と主張される方がいますが、当然ながら記載内容の不備にかかわらず提出された診断書の内容で等級が診査されることになります。不支給決定を受けてから診断書の不備を問題にしても結果は覆りません。
*診断書の内容について請求前にしっかりと確認しておく必要があります。実際の症状より軽く書かれていたり記入漏れがある場合は医師に問い合わせてすぐに加筆修正してもらいましょう。

② の場合
 カルテの写しや第三者証明等追加資料を用意します。20歳前傷病の可能性、社会的治癒等も考慮し初診日の特定に努めます。

③の場合
 基本的に年金事務所で請求を行った場合納付要件が満たされていないと受理されることはありません。請求段階で納付要件を満たしていない旨指摘された場合は、20歳前や請求時の傷病と因果関係のある症状で病院を受診したかどうか及び社会的治癒を主張することは可能か等いろいろな可能性を一つずつ検討していく必要があります。

 審査請求を行う上でのポイント


 まず、処分の違法性、妥当性を検討します。
 認定基準や、機構マニュアルを読み込み、さらに疑義紹介や法令の解釈に矛盾はないか、を調べていきます。
 必要であれば医師への意見書の作成依頼やカルテの開示請求を行います。
 但し、不支給の決定後に新たに作成した診断書を提出しても基本的に審査の対象とされません。そもそもなぜ最初から提出しなかったのかという話になります。請求時に提出した診断書に書かれていなかった検査数値や、現在の新たに付け加えられた異常所見を記載した診断書を提出した場合、請求時の現症が推認できる場合は参考とされるかもしれないという程度です。
 なお、審査請求で裁定請求の決定が取り消される確率は低いため、あらかじめ再審査請求を視野に入れて取り組んでいくことが肝心です。

 請求書類の写し、決定に至った審査内容の入手方法


 請求時に提出した診断書等のコピーを取っていなかった場合、年金事務所に写しの交付を依頼します。取り寄せに1週間~10日前後かかります。
 厚生労働省に個人情報の開示請求をし「障害状態認定表」「障害状態認定調書」を入手することができます。但し年金事務所の場合とは違い手に入るまで1か月以上かかります。

 


 審査請求書の送付


 作成した書類および添付書類は管轄の都道府県社会保険審査官に、通常は郵送で提出します。郵送については必ず記録の残る方法ですることが大事です(簡易書留、配達証明、レターパック等)。また、作成した書類や添付書類は必ずコピーを取って置いてください。

 審査請求の結果が送付されてきたら


 決定書は、郵便で届きます。なお、審査請求の急増により、60日以内に決定されることはほとんどありません。
 審査請求をしてから2か月までに決定がない場合は社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなし、審査官の決定を待たずに再審査請求(飛躍請求)または提訴することができます。審査請求段階では容認される可能性が少なく、結論を急ぐ場合は飛躍請求を行います。

 審査結果は、「処分変更」と「社会保険審査官の決定通知」の2通りがあります。
社会保険審査官が審査する前に、保険者が原処分の変更をすることがまれにあります。
その場合提出している審査請求については、不服が解消されたことになりますので、社会保険審査官に「審査請求取下書」にサインしてを提出するということになります。これが「処分変更」です。後日、正しい決定の文書が郵送されてきます。
 「社会保険審査官の決定通知」には、「容認」「棄却」「却下」の3通りあります。
 棄却された場合はほとんど再審査請求に進んでいきます。

 なお、再審査請求は決定通知書が届いた翌日から2か月以内に行う必要があります。
 不在通知が投函されている場合、その日が「届いた日」になります。

 公開審理


 社会保険審査会からまずは、再審査請求の受取通知が届きます。それから心理開催まで6か月前後かかります。審理の1か月程前に審理の期日を伝える通知が届きます。
追加資料がある場合は、審理日の10日前に提出することとされていますが、当日でも可能です。  
 指定された日時に出席し、障害の状態、日常生活の支障等を申立てます。請求者本人が出席できない場合は、家族等を代理人とする委任状を提出する必要があります。

 裁決書の送付


 公開審理から1~5ヶ月ほど後に裁決書が届きます。
 この通知が、行政段階の最終決定です。コピーをとっておきます。
 残念ながら棄却された場合の最終手段として訴訟裁判があります。
 このケースは、費用面や心理面、労力、時間などかなりのハードルが高くなりますので、慎重に可能性を見極める必要があります。

 再請求をする場合


 不支給決定を受けた場合の再請求は1年待つことなくすぐにでも提出することは可能です。額改定請求とは取り扱いが異なります。
 再請求の場合は前回の請求以上に有効と思える追加資料を添付する必要があります。
 前回よりも状態が悪い内容を記載した診断書を提出する場合、なぜ最初の請求時にそれが用意出来なかったのかを合理的に説明できる状態にしておく必要があります。
 傷病についての評価が変わっていた場合は医師に照会が入ったり、カルテの開示を求められることもあります。 
 現実問題として、最初の請求と違い、再請求の場合は審査が非常に厳しくなります。審査請求等と同じように最初から有効な資料をすべて添付していく必要がります。




2024年08月31日