納付要件が満たせない場合

 

 障害年金の請求をしようとして年金事務所に行ったところ、「保険料納付要件を満たさない」言われ途方に暮れる方が結構おられます。

 

<保険料納付要件>
初診日の前日において、次の①と②どちらかの要件を満たす必要があります。


①初診日の前々月における直近1年間に未納期間がないこと
②初診日の前々月におけるすべての被保険者期間のうち、2/3以上が保険料納付済期間又は保険料免除期間であること


*初診日が1991年(平成3年)5月1日前にある傷病により障害年金請求を行う場合、「月の前々月」とあるのは「月前における直近の基準月(1月、4月、7月及び10月の前月」とするとされています。
*部分免除の場合は、免除額を差し引いた額の保険料を納付していなければ「未納」になります。また納付は初診日よりも前にないと納付要件を満たせません。

 

 

<納付要件を満たせない場合>

初診日とした日よりも前の日に受診した日はないか
 その傷病で関連して別の医療機関を受診していないか。
    ▶▶初診日について:初診日の考え方

 

社会的治癒に相当する期間があるかどうか
 社会的治癒とは、医学的には治癒していない場合に、社会保険上、被保険者が不利益を受けないための考えだされた概念です。
    ▶▶社会的治癒を主張する場合

 

難病の場合は、傷病名の診断があった日が初診日になることがあります。
 難病の場合は、正確な病名がつくまで複数のクリニックや病院を受診していることがよくあります。過去の受診日において初診日の特定が難しく、診断名がついた日が初診日とみなされることがあります。

 

初めて1級又は2級に該当する場合
前発の障害だけでは2級に該当しなかったが、後発の傷病(基準傷病)も併せると1級又は2級に該当することによる請求です。
 (他の請求との違い)
 納付要件、加入要件は基準傷病の初診日で見ます。
 初めて1級又は2級になった時点で受給権が発生し支給は請求月の翌月からです(遡及しません)。
 *65歳の誕生日の前々日までに「初めて2級」「初めて1級」に該当する必要があります。ただし、請求は65歳以降でもかまいません

 

精神疾患(発達障害、うつ病等)の場合で知的障害を伴う場合
 発達障害であっても、知的障害を伴うものであれば初診日は出生時(0歳)となり納付要件は問われません。但し国民年金での請求となります(3級無し)。グレーゾーンの方は大人になってから軽度の知的障害であることが判明する場合もあります。
 知的障害が3級非該当程度の場合は発達障害やうつ病等での初診時の納付要件が問われることになります。
 *療育手帳の有無、発育・養育歴、教育歴などを考慮。

  上記④⑤の場合は社労士に依頼されることをお勧めいたします。
  特に④の「はじめて1,2級」は障害年金を専門に取り扱っている社労士でも手掛けたこ とが少ない方が多いと思います。

 


   

  どうしても納付要件が満たせない場合

厚生年金保険の障害者特例
 65歳までに「報酬比例部分」の特別支給の老齢厚生年金が受給している方が、下記の要件を満たした場合、あわせて「定額部分」が受給できます。


・厚生年金保険の被保険者でないこと
・障害等級1級から3級に該当する程度の障害の状態にあること


 *本人の厚生年金加入期間が20年以上ある場合、加給年金対象となる65歳未満の配偶者や  高校卒業までの子について加給年金も支給されます。
   <対象者>
   男性: 昭和36年4月1日以前に生まれ(令和3年に60歳)
   女性: 昭和41年4月1日以前に生まれ(令和3年に55歳)
       老齢基礎年金の受給資格期間(10年)がある
       厚生年金保険等に1年以上加入していた
       60歳以上

 

特別障害給付金(日本年金機構HPより 2025年4月現在の内容です)


 <支給の対象となる方>
 平成3年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生(※1)
 和61年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者等の配偶者(※2)であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日(※3)があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある方が対象。ただし、65歳に達する日の前日までに当該障害状態に該当し、請求した方に限られます。
なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などを受給することができる方は対象になりません。
また、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。
(※1)国民年金任意加入であった学生とは
次の(1)または(2)の昼間部在学していた学生(定時制、夜間部、通信を除く。)
(1)大学(大学院)、短大、高等学校および高等専門学校
(2)また、昭和61年4月から平成3年3月までは、上記(1)に加え、専修学校及び一部の各 種学校
(※2)被用者等の配偶者とは、以下の場合となります。
(1)被用者年金制度(厚生年金保険、共済組合等)の加入者の配偶者
(2)上記(1)の老齢給付受給権者及び受給資格期間満了者(通算老齢・通算退職年金を除 く)の配偶者
(3)上記(1)の障害年金受給者の配偶者
(4)国会議員の配偶者
(5)地方議会議員の配偶者(ただし、昭和37年12月以降)
(※3)障害の原因となる傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日

 <支給額>
障害基礎年金1級相当に該当する方:令和7年度基本月額56,850円(2級の1.25倍)
障害基礎年金2級相当に該当する方:令和7年度基本月額45,480円

*特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて毎年度自動的に見直しされます。
*老齢年金、遺族年金、労災補償等を受給している場合には、その受給額分を差し引いた額を支給します。(老齢年金等の額が特別障害給付金の額を上回る場合は、特別障害給付金は支給されません。)
*経過的福祉手当を受給している方へ
特別障害給付金の支給を受けると、経過的福祉手当の受給資格は喪失します。
*特別障害給付金は、認定を受けた後、請求月の翌月分から支給します。
支払いは、年6回(2月、4月、6月、8月、10月、12月)です。前月までの分を支給します。(初回支払い等、特別な場合は奇数月に前々月までの分の支払いを行う場合もあります。)


 <所得による支給制限>
受給者本人の前年の所得が4,721,000円を超える場合は、給付金の全額が支給停止となり、3,704,000円を超える場合は2分の1が支給停止となります。
支給停止となる期間は、10月分から翌年9月分までとなります。

 住所地の市区町村の窓口へ申請してください。
 *特別障害給付金の審査・認定・支給事務は、日本年金機構が行います。


特別障害者手当

 精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に対して、重度の障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当が支給されます。

 <支給要件>
精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の方に支給されます。

 <支給月額>(令和7年4月適用)
   29,590円

 <支払時期>
特別障害者手当は、原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。

 <所得制限>
受給資格者(特別障害者)の前年の所得が一定の額を超えるとき、もしくはその配偶者又は受給資格者の生計を維持する扶養義務者(同居する父母等の民法に定める者)の前年の所得が一定の額以上であるときは手当は支給されません。

住所地の市区町村の窓口へ申請してください。

 

 

2025年05月21日