障害年金の請求自体は自分自身ですることが可能です。親兄弟や、施設職員(ケアワーカー)やケースワーカー、ソーシャルワーカーが代わりに手続きをする場合もあります。
当然ながら、ご自身又は支援者が請求を行った場合、請求費用を抑えることができます。
とりあえず最初は自分自身で請求をして、不支給の場合は専門家に依頼する方もいます。審査請求や再審査請求もご自身でされる方も当然いますが少数です。
社労士へ依頼するか?ご自身でするか? 請求を行う傷病によって、難易度は相当程度変わってきます。 支援者の有無等によっても変わってきます。 何がベストの選択かは一概には言えません。 |
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障害年金請求を専門とする社労士のホームページには、依頼するメリット、デメリットが大抵記載されています。依頼したからと言って100%受給できるわけではない旨明記されています。障害年金請求を専門とする社労士であっても、100%受給件を保証できるわけではありません。
但し、ご自身でなされるよりも社労士に依頼した方が受給確率が高いことは確かです。そうでなければ、障害年金請求代行がビジネスとして成り立っていません 。
費用を抑えて請求をしても、受給権を得られなければ全く意味がありません。逆に、社労士に報酬を支払っても年金が支給されるのであれば充分に元は取れます。
多くの社労士は成功報酬制をとっています。受給権を取得できなければ、そもそも報酬を支払う必要はありません。
*一部着手金を設定している社労士もいます。事前にご確認ください。
傷病により請求の難易度は大幅に変わってきます。
少しでも不安に思われたなら一度社労士に相談をしてみることをお勧めいたします。

では、ご自身(もしくは支援者)で請求を行うことが比較的容易な場合とはどのようなときでしょうか。
①初診日が明らかでカルテも残っており簡単に初診証明がとれる場合で、納付要件にも問題がない。
②これまでに数回請求手続をしたことがある支援者が身近にいる。
*審査請求、再審査請求をしたことがあれば申立書や診断書で保険者が重要視する点が分かっており、より説得力のある申立書の作成が可能となります。
③数値や治療の事実(人工透析や人工関節等)によって等級が認定される場合 。
*但し、ご自身又は支援者が各傷病ごとに診断書の記載ポイントをしっかりと理解している必要があります。
私自身、請求を依頼した方がいいかどうかと聞かれれば、
「手続に不安があるようであれば依頼すべき」だとお答えします。
ご自身で請求をされる理由で一番多いのは「社労士への報酬」の問題です。年金の2~3か月分が相場です。確かに、障害厚生年金であれば40万円前後になってきます。
では、2~3か月分という報酬が依頼者にとってそれほど割に合わないものなのでしょうか。
社労士に依頼するメリットの一つに請求時間の短縮があげられます。当然ながら社労士は「請求」というゴールに向かって最短距離を走ります。
ではご自身でされる場合、どの程度の時間を要するか考えてみましょう。
◇以下は請求までの流れです◇
ご自身で全て調べ、なおかつ年金事務所へ相談をしないで提出される場合は別として、年金事務所の指導の下請求をすすめるという前提で解説をします。
請求を決断
⇒(1~1カ月半) ⇒ 年金事務所へ相談
⇒(2~3週間) ⇒ 受診状況等証明書の取得
⇒(1~1カ月半) ⇒ 年金事務所へ相談
⇒(1~2カ月) ⇒ 診断書を入手・申立書の作成
⇒(1~1カ月半)⇒ 年金事務所へ書類の提出(請求完了)
年金事務所での相談は事前予約が必要です。大阪であれば約1~1カ月半程度待たされます。必要書類は順序良くそろえていく必要がありますので、通常、受診状況等証明書と診断書を同時に取得するようには指導されません(初診日の特定、受診状況等証明書の取得に問題が無い時は同時並行で診断書の作成依頼も可能です。但し間違えればすべて取り直しになりますが)。申立書については、この段階では大まかな流れを時系列でまとめておく程度です。
受診状況等証明書が手に入ると次は診断書の作成依頼を行います。受診状況等証明書をもって年金事務所へ行き、次の手順を確認致します。診断書がどの程度の期間で出来上がってくるかは医師次第です。クリニックの場合、うまくいくと2週間程度で手に入ることもありますが、医療機関の規模が大きくなるにつれ、入手までに時間がかかります。
診断書入手後、すぐに申立書を添えて請求という手順もありますが、念のため診断書入手後は年金事務所へ相談に行くべきです。診断書に記入漏れ、記入間違い、訂正方法の不備等がないかどうかしっかりとチェックをしてもらいます。
診断書の事前チェックを怠り、いざ請求時に修正箇所が見つかった場合は悲惨です。下手をすると診断書を再度取り直す必要が出てきます(うまくいけば日付の変更依頼だけですむこともあります)。
受診状況等証明書及び診断書に記載された内容をよく確認し申立書を作成していきます。記載されている内容に齟齬が生じていると請求書類の返戻りという事態を招きかねません。精神疾患の場合などは、特にご自身が主張する症状の程度と診断書の内容がかけ離れている場合、医師照会が行われることがあります。医師照会が入ると追加費用(診療録入手費用)と3カ月程度審査結果ができるまでの期間が余計にかかります。
受診状況等証明書、診断書、申立書及びその他添付書類を揃え提出を行い、職員による細部のチェックが終了して無事完了です。
うまく事が運べば3~4カ月程度で請求までたどり着けます。平均的には5~6か月程度かかっているようです。
では、社労士に依頼した場合はどうでしょうか。
(各事務所によって進め方が異なる場合があります。事前にご確認ください)
初診日が定まらない、カルテが残っておらず初診証明が手に入らない、または難病や併合、差引認定等が絡む複雑な事案でない限り年金事務所へ相談に行くことはありません。診断書を入手し内容を確認した後、遅くても1週間程度で申立書の作成は終えます。
事案にもよりますが、提出までおよそ2~3カ月程度です。
要はご自身でされるよりも、2~3カ月早く終了するということです。事後重症請求の場合、1月でも早く提出すればその分支給される年金は増えます。社労士が代行することにより増えた年金部分が報酬に回っていくということです。依頼者に余分な負担が発生するわけではありません。
さらに、成功報酬制の場合、不支給決定を受けた際には社労士への報酬も発生しません。報酬の支払いは年金が振り込まれてからとなりますので、別途ご自身の預金を取り崩したりする必要は全くありません。
ご自身で請求をすることで「社労士に支払う報酬を削れる」、と考える方がいますが、受給できる期間が2~3カ月早まることで、結局お手元に残る年金額はご自身でされた場合と比べほとんど変わりません 。

精神疾患を患っておられる方で、最初はご自身で請求をするつもりで進めていたものの、その後症状が悪化し手続きが行き詰り、半年程度放置したのちに請求代行を依頼しに来られる方が毎年数名おられます。言いにくいことですが、最初から依頼をして頂ければ、もうとうに請求手続は終わっています。
精神疾患の場合、症状がある程度安定、軽快された頃に請求手続きに入られる方が多いです。不支給又は等級落ち(2級だと思っていたが3級相当だった)になるのはこのような方が多いように思います。
精神(うつ、統合失調症、発達障害等)での請求を考えられる場合、支援者がいないようであれば最初から社労士に依頼する方が無難です。
ホームページにで「精神疾患専門」と謳っている社労士がいますが、そもそも精神での請求を不得意にしている社労士はいません(もしくは少ないです)。なぜなら、障害年金の請求で取り扱う傷病は精神が圧倒的に多いからです。どこの事務所でもそれは同じだと思います。

障害年金請求は多くの方にとって、一生に一度あるかないかです。
支援者(ケースワーカ―やソーシャルワーカー等)は障害年金請求が仕事の中心ではありません。業務の一部もしくは善意で手助けをしてくれているものと思います。日々、それ以外の事(仕事)に忙殺されていることでしょう。
障害年金を専門にしている社労士のメイン業務は障害年金請求代行です。日々同業者や書籍等で情報収集、知識のブラッシュアップを行っています。支援者の方が行っている業務の大半は社労士にはできませんが、障害年金請求については精通しています。
前述しましたが、医師に診断書の記載を依頼し、検査数値等を記載してもらうだけで受給に至るケースもあります。
但し、症状を数値で表せない精神疾患の場合は勝手が違います。
年金事務所や支援者の指示で書類を揃えるだけでは受給権は取得できません。
区役所の窓口で相談をしても全ての職員が障害年金に精通している訳ではありません。
一方、年金事務所の予約相談では専門の職員が対応をしてくれます。専門的な知識を持っており丁寧に手続の進め方を説明してくれますが、初診日の特定が困難な場合や申立書の記載内容等、個別具体的なものには対応してもらえないことがあります。
精神での請求はできる限り社労士に依頼した方が良い理由 |
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1 診察は毎回5~10分程度で、医師に日常生活での不便さが伝わっていない。 |
2 医師に自分自身の症状が伝えにくい。医師が高圧的で言いたいことが言えない。 |
3 医師が障害年金に理解を示さず非協力的。 |
4 体調の波が激しく、遅遅として書類作成が進まない。 |
5 申立書の記載方法がよくわからない(自分自身の辛さ、しんどさに終始し、審査に必要 とされるポイントが抜け落ちている)。 |
6 診断書作成時、とりあえず年金事務所や役所で指示をされたとおりに記載事項を埋めた だけで、ポイントがどこにあるかわからない(ガイドラインの等級の目安を見て安心さ れる方がいますが、あくまでも目安のため、実際は下位の等級もしくは不支給となる場 合もあります) |
7 医師から「障害年金を受けられる」という言葉を鵜吞みし、必要書類を揃えて提出する だけで受給できると考えている場合。(医師に等級を判定する資格はありません) |
8 とりあえず自分で請求をしてみて、ダメなら専門家に依頼する。(提出書類の不備によ る不支給が多いように思われます。不服申し立てはこの提出した書類をもとに争うこと になりますので、最初に提出した書類に不備があると、審査請求をする意味がありませ ん。もしくは決定が覆る可能性が果てしなく低いです) |
*あくまでも当事務所で相談される方の傾向です。他事務所では、また別の考えを持っておられることと思います。気になる方は、複数の事務所へ問い合わせてみてください。
障害年金請求は、生涯において一度あるかないかのことです。受給権を獲得すれば長期間年金をもらい続けることができる場合もあります。
社労士への報酬の支払いに窮するようであれば、報酬の支払い期限を年金が指定口座に振り込まれてからにしてもらえるよう事前に相談をしてみるべきです。(大抵の社労士は報酬支払時期について、依頼者に負担が生じないように対応してくれると思います)
以上、わずか2~3カ月分の年金に相当する報酬を気にして、大切な権利を取り損ねるこねるようなことがあれば本末転倒です。
年金事務所や区役所に相談に行く前に、一度社労士が実施している無料相談等を利用していみてはどうでしょうか。