知的障害、診断名が変わった場合

40代男性 知的障害
Q.現在、知的障害で20歳前基礎年金2級を受給中。4年前に受診した際双極性感情障害との診断名がついた。知的障害とは別に、双極性感情障害でも障害年金は請求できますか?


A.障害年金請求上は、知的障害に起因して双極性感情障害が発症したと考えられるため、診断名が変更されたものとして同一疾病として扱われるので別に請求することはできません。

 

 

具体的な取扱いについては、厚生労働省の疑義照会「知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱い(情報提供)(給付No.2011-1)」で、回答されています。

【照会内容】


 知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱いについて伺
います。
 平成23年6月30日付にて発出された、厚生労働省年金局長通知「国民年
金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正について」では、「第8節/精神の障害」の「2 認定要領」にて、「D 知的障害」、「E 発達障害」のそれぞれの区分でいずれも「また、知的障害(Eでは「発達障害」である。)とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。」とありますが、これまで、知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱いについて具体的に明示されていたものはなく、具体的にはどのような取扱いとなるのかご教示願います。

 知的障害や発達障害と他の精神疾患を併発しているケースについては、障害の特質性から初診日及び障害状態の認定契機のついて次のとおり整理するが、認定に当たっては、これらを目安に発病の経過や症状から総合的に判断する。

(1) うつ病又は統合失調症と診断されていた者に後から発達障害が判明するケースについては、そのほとんどが診断名の変更であり、あらたな疾病が発症したものではないことから別疾病とせず「同一疾病」として扱う。

(1)の場合、診断名が変わっただけで、初診日はうつ病又は統合失調症と診断された日のまま

(2) 発達障害と診断された者に後からうつ病や神経症で精神病様態を併発した場合は、うつ病や精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考えが一般的であることから「同一疾病」として扱う。

発達障害が原因と考えられるため、初診日は発達障害の初診日のまま

(3) 知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾病」として扱う。
 例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。
 なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害がある者については、発達障害の症状により、はじめて診療を受けた日を初診とし、「別疾病」として扱う。

知的障害と発達障害があり、認定日時点では2級不該当で障害年金の対象とはならなかったものの、発達障害により就労や日常生活がより難しくなった場合は事後重症となり、初診日は知的障害の初診日(出生日)のまま
 *知的障害があっても3級不該当程度である場合には、発達障害に関連した受診の初診日が、障害年金申請の初診日になります。

(4) 知的障害と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して発症したという考え方が一般的であることから「同一疾病」とする。

知的障害が原因と考えられるため、初診日は知的障害の初診日(出生日)のまま

(5) 知的障害と診断された者に後から神経症で精神病様態を併発した場合は「別疾病」とする。
 ただし、「統合失調症(F2)」の病態を示している場合は、統合失調症が併発した場合として取り扱い、「そううつ病(気分(感情)障害)(F3)」の病態を示している場合は、うつ病が併発した場合として取り扱う。)

別疾病となるため、初診日は神経症に関して初めて医療機関を受診した日
 *統合失調症の病態であれば、(6)と同様に取扱い、双極性障害(躁うつ病)の病態であれば、(4)と同様に扱う

(6) 発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから原則「別疾病」とする。
ただし、「同一疾病」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付してくることがある。したがって、このような場合は、「同一疾病」とする。

基本的には別疾病となり、障害年金申請の初診日は統合失調症に関士診断を受けた日
 ただし、医師が発達障害・知的障害と同一傷病であるとの診断書を作成した場合などは、同一傷病として扱われる可能性あり

(参考)
発達障害は、ICD-10では、F80からF89、F90からF98にあたる。
2021年10月24日