基本的に手帳と年金の制度は異なっています。よって、手帳と障害年金の等級には関係が無いというのが原則です。手帳については神経症も対象になりますが、年金では原則、認定対象とはなりません。
しかしながら、身体障害者手帳とは違い、精神障害者保健福祉手帳の制度自体が障害年金を参考に作られているため、手帳の診断書と年金の診断書の様式「日常生活能力評価」の部分がかなり似通ったところがあります。
等級判定について
○精神障害者保健福祉手帳の等級判定
(1) 精神疾患の存在の確認
(2) 精神疾患(機能障害)の状態の確認
(3) 能力障害(活動制限)の状態の確認
(4) 精神障害の程度
以上の順で総合判定が行われる。
○精神の障害の程度の判定
精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定。
障害の等級
○手帳 障害等級
1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 精神障害であって、日常生活が著しく制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
○年金における障害の程度
1 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
2 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。
3 級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)
診断書 「日常生活の能力の判定」について
○手 帳
(1)適切な食事摂取
(2)身辺の清潔保持・規則正しい生活
(3)金銭管理と買い物
(4)通院と服薬(要・不要)
(5)他人との意思伝達・対人関係
(6)身辺の安全保持・危機対応
(7)社会的手続きや公共施設の利用
(8)趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加
○年 金
(1)適切な食事
(2)身辺の清潔保持
(3)金銭管理と買い物
(4)通院と服薬(要・不要)
(5)他人との意思伝達及び対人関係
(6)身辺の安全保持及び危機対応
(7)社会性
*手帳の評価項目に「(8)趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加」が加えられています。
診断書 「日常生活能力の程度」について
○手 帳
(1) 精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。
(2) 精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。
(3) 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とす る。
(4) 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする。
(5) 精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない。
○年 金
(1)精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活 は普通にできる。
(2)精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必 要である。
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要 である。
(4)精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要であ る。
(5)精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要 である。
*年金(5)において「常時の援助」とあるのに対し、手帳(4)で「常時援助」とされていることから、手帳の2級の範囲は障害基礎年金の2級よりも狭くなっていると考えられます。
医師への診断書作成依頼
医師は手帳の診断書については比較的気軽に作成してくれますが、障害年金の診断書となると話はそう簡単にはいきません。障害年金の診断書作成については、その診断書の内容次第で月数万~数十万円のお金が振り込まれることになるため、手帳の時とは違い、気軽には応じてはくれません。特に手帳が3級の場合、障害基礎年金2級が難しいと考える医師もおり、万が一不支給となった場合の事を考えると、「作成できない」もしくは「書いても受給できない」といい診断書作成を拒絶される場合もあります。
手帳と年金の診断書の記載内容は似通っており、手帳が3級であれば年金も同程度ではないかと思いがちですが、年金の審査では日常生活能力の評価が手帳の時以上に重要になります。「日常生活を送る上での制限やどの程度家族や周囲の援助が必要とされているか」という点をしっかりと医師に伝えておくことで障害年金2級の受給権を得ることもできます。
障害者雇用を前提に、手帳3級を取得された際も、「制限や配慮を受けたうえで、仕事はなんとかできている」という状態であれば、日用生活能力如何により障害年金2級に該当する可能性は十分にあります。
上記のとおり医師は障害年金請求の診断書作成にはすんなりと応じてくれない場合があります。また作成はしてくれても、内容が認定基準の3級程度にとどまり、障害基礎年金の場合には不支給となることも少なくありません。
診断書で2級相当と判断されるためには、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」をどのように記入してもらうかが非常に重要です。ご自身の症状を医師に正確に伝えるための方策が必要となってきます。
医師とのコミュニケーションがとれないもしくはご自身で症状をうまく伝えることができない場合、現在の症状とはかけ離れた軽い内容の診断書を作成される可能性があります。
当事務所では、ご依頼者とお会いし、ヒアリングを実施しした後に、医師への診断書作成依頼書及び申立書を作成いたします。
診断書は年金受給の要です。現在のあなたの症状が2級に該当する可能性があるとご判断されたら、諦めずに当事務所にご連絡をください。







