線維筋痛症で障害年金を受給するために
線維筋痛症は身体の広範な部位に疼痛をきたす原因不明の慢性疾患です。
主症状は慢性疼痛で、疼痛部位は右・左半身、上・下肢、体軸部など全身の広範囲に及びます。疲労感や全身倦怠感、睡眠障害、不安感、抑うつ感など精神神経症状が認められ、過敏性腸症候群に類似した腹部症状・便通異常、動悸、めまい感、焦燥感や集中力低下、体のほてり感や冷感、微熱などもきたすこともあります。
線維筋痛症の臨床症状と重症度分類
| QOL | 疼痛部位 | 圧通の程度 | ||
|---|---|---|---|---|
| ステージⅠ | ACR分類基準の 18 カ所の圧痛点のうち 11 カ所以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。 | 痛みはあるが普通の生活ができる | 体幹部 | 圧通 (4kg/㎠) |
| ステージⅡ | 広範囲な筋緊張が続き腱付着部炎を併発する一方、不眠、不安感、うつ状態が続く。通常の日常生活がやや困難。 | 痛みはあるが普通の生活ができる | 体幹部 | 圧通(4kg/㎠) |
| ステージⅢ | 痛みが持続し,爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが増強する自力での生活は困難。 | 痛みのため普通の生活が困難 | 体幹部から抹消部痛 | 軽度の圧通 |
| ステージⅣ | 痛みのため自力では体が動かせず、ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。 | 寝たきりであるが眠れない | 全身痛 | 触痛・自発痛 |
| ステージⅤ | 激しい全身の痛みと共に、膀胱や直腸の障害、口の渇き、眼の乾燥、膀胱症状など全身に症状が出る。通常の日常生活は不可能。 | 寝たきりであるが眠れない | 全身痛 | 触痛・自発痛 |
出典 日本線維筋痛症学会「線維筋痛症診療ガイドライン」
次の表は、上記認定事例の一部をまとめたものです。
| 認定等級 | 重症度分類 | 日常生活動作 | 筋力 |
|---|---|---|---|
| 1級9号 | ステージⅤ | △×と× | 半減・著減 |
| 2級15号 | ステージⅢ | ○△と△× | 半減 |
| 3級12号 | ステージⅡ | ○、○△、△×、片足で立つのみ× | やや減・半減 |
出典 安部敬太編著「詳解 障害年金相談ハンドブック」第2版 515項より一部抜粋
初診日について
線維筋痛症については、他の傷病に比べ初診日の特定が非常に難しいです。
他の疾病と区別できるような特徴的な症状がそもそも少なく、確定診断が遅れてしまう傾向があり。線維筋痛症の診断を受けるまでに、いくつもの病院を転々とするケースも少なくありません。
初診日については、日本年金機構が線維筋痛症の初診日について公表している「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」が参考となります。
上記文書には、確定診断を受けた日だけでなく、条件を満たせば請求者本人が申し立てた日を初診日として認める場合もあるといった内容となっています。
診断書について
線維筋痛症で障害年金を請求する際は、上記診断書記載事例にもあるように肢体の障害の診断書を使用します。診断書⑨欄に必ず線維筋痛症のステージを記入してもらう必要があります。
なお、精神神経症状がある場合は精神の診断書を使用する場合もあります。精神科医以外に記載を依頼する場合は、そもそもその病院(たとえば皮膚科等)で作成した精神の診断書で認められた前例があるのかを確認する必要があります。
また、最初に線維筋痛症と診断された日を初診として受診状況等証明書を取得し、診断書はうつ病で提出した場合、別疾病と判断されることがあります。
線維筋痛症での請求については、事例ごとに対応が大きく異なってきますので、時間をかけて年金事務所とよく相談をした上で必要書類を揃えていく必要があります。







