「子供が大きくなってきたので、療育手帳を取った方がいいのだろうか」
「主治医から『障害年金を申請するなら、まず療育手帳を取りなさい』と言われた」
療育手帳(知的障害者手帳)の取得を検討される際、このような疑問や悩みを抱える方は少なくありません。
しかし、療育手帳の制度や、その先にある「障害年金」の仕組みには、一般にはあまり知られていない「落とし穴」や「高いハードル」が存在します。

1. 「医師から『障害年金には手帳が必要』と言われた」…それは間違いです!
今でも多くの方が誤解しており、病院の先生さえも間違えて案内しがちなポイントです。
「障害年金をもらうためには、事前に療育手帳(または精神障害者手帳)を取っておかなければならない」というのは、完全に間違いです。
療育手帳(福祉制度)と障害年金(年金制度)は、完全に別の法律・別の基準で運営されている独立した制度です。
療育手帳
各自治体が、独自の基準で判定します。
障害年金
国(日本年金機構)が、法律に基づき全国一律の基準で審査します。
そのため、療育手帳を持っていなくても障害年金を受給することは可能です。
逆に、「手帳をもっているからといって、障害年金が自動的に支給されるわけではない」という点にも注意が必要です。
2. 大人の療育手帳(新規取得)はなぜ難しいのか?
子供の頃に療育手帳を取得できなかった(または申請しなかった)方が、大人(20歳前後や就職後)になってから初めて療育手帳を申請する場合、そのハードルは一気に高くなります。
その理由は、療育手帳の定義にあります。 療育手帳が交付される知的障害とは、原則として「おおむね18歳(または20歳)までの発達期に現れた知的機能の障害」とされているためです。
大人になってから申請する場合、以下の「壁」が立ちはだかります。
幼少期の証明ができない
小中学校時代の通知表、知能検査(IQテスト)の結果、母子手帳など、「18歳以前から知的障害があったこと」を示す客観的な証拠を求められますが、紛失しているケースが多い。
「日常生活の困りごと」が伝わりにくい
面接時に本人が「一見、普通に会話ができてしまう」場合、表面上のやり取りだけで「軽度(対象外)」と判定されてしまうケースが後を絶ちません。
3. うつ病や発達障害(ADHD/ASD)を併存している場合の複雑さ
知的障害(軽度)の特性を持ちながら、大人になって社会に出た結果、二次障害として「うつ病」「適応障害」を発症したり、「発達障害(ADHDや自閉スペクトラム症:ASD)」の診断を併せて受けたりするケースが非常に増えています。
*複数の疾患が併存している場合、手帳や年金の申請は非常に複雑化します。
療育手帳の判定では「精神疾患」は考慮されにくい
療育手帳はあくまで「知能指数(IQ)と社会適応能力」の審査です。いくらうつ病が重くても、IQが一定基準以上であれば、生活状況を考慮するといっても、療育手帳は不交付になる場合が多いです。
障害年金では「統合された一病」として審査される
一方、障害年金(20歳前傷病など)においては、知的障害と発達障害、精神疾患は別々ではなく、「並存している状況で、現在の日常生活にどれだけ支障が出ているか」を総合的に判断されます。ここを書類上で正しく主治医や年金機構に説明できないと、実態より軽い等級に判定されてしまうリスクがあります。
4. 面談や診断書依頼で「やってはいけないこと」と必要な準備
手帳の判定面談や、障害年金の診断書を医師に依頼する際、多くの親御様や当事者様がやってしまう最大の失敗があります。それは、「面談の場や診察室で、つい見栄を張って『できます』と言ってしまうこと」です。 当事者の方は、不慣れな環境で緊張すると「はい、大丈夫です」「自分でやれます」と答えてしまいがちです。しかし、これがそのまま書類に書かれると、実態は困窮しているのに「問題なし」と判断されてしまいます。 失敗を避けるためには、以下の準備(メモの作成)が不可欠です。
日常生活の「できないこと」を具体的にリスト化する
・金銭管理は親がすべてやっている(一人にすると使い切ってしまう)
・ 漢字の読み書きや、役所の書類手続きが一人では一切できない
・道に迷いやすく、慣れない場所へ一人で行くことができない
・指示が具体的でないとパニックになる、就労しても長続きしない
*「できる」「できない」についても、障害年金は独特の考え方があります。認定基準やガイドライン等をしっかりと理解できていないと、ご本人の症状、実態を正確に伝えることはできません。
過去の生育歴を年表にする
保育園や学校での様子、不登校の有無、特別支援学級の在籍歴などを時系列でまとめ、医師や専門機関に「視覚的」に伝える準備をします。
▷確実な生活基盤を作るため、20歳以上で申請をする場合、障害年金の請求も「セット」で考える
療育手帳の取得を考えているということは、ご本人やご家族が「これからの生活や将来に不安を感じている」という何よりのサインです。
手帳を取得すれば、税金の優遇や交通機関の割引などのサポートが受けられます。しかし、ご本人の将来の生活を本当に支えるのは、毎月(隔月)決まった現金が国から支給される「障害年金」です。
「手帳の申請だけで手一杯なのに、さらに複雑な障害年金の書類を作るなんて無理…」
「主治医への説明や、過去の証明をどうやればいいのか分からない」
そのようなときは、一人で悩まずに、障害年金と福祉制度の専門家である社会保険労務士(社労士)にご相談ください。 当事務所では、療育手帳の取得アドバイスはもちろん、「障害年金」の受給権を勝ち取るための診断書依頼や申立書の作成サポートを行っております。
まずは一度、お気軽にお悩みをお聞かせください。あなたの不安を安心に変えるお手伝いをいたします。







