「人工透析を始めたら障害年金がもらえる」と聞いたことはありませんか?
人工透析を受けている方は、原則として障害等級「2級」に認定されることになっています。
一方で、「透析をしているのに不支給になった」「手続きが難しくて挫折した」という声も少なくありません。今回は、人工透析で障害年金を請求する際に必ず押さえておくべき注意点をまとめました。
1. 最大の難関は「初診日」の特定と証明
障害年金の審査で最も重要といっても過言ではないのが「初診日」です。
初診日は「透析開始日」ではない 人工透析が必要になった原因の病気(原疾患)で、初めて医師の診察を受けた日が初診日です。
糖尿病性腎症の場合
腎臓が悪くなった日ではなく、「糖尿病で初めて受診した日」が初診日になります。
慢性腎炎や多発性嚢胞腎の場合
その病気で初めて病院に行った日が初診日です。
カルテの「5年保存」の壁
腎臓の病気は進行が緩やかで、初診日から透析開始まで10年、20年と経過していることも珍しくありません。しかし、病院のカルテ保存期間は原則5年です。 「最初の病院がもうない」「カルテが破棄されている」といった場合、診察券、お薬手帳、健康診断の結果などを駆使して証明する必要があります。
2. 意外な落とし穴「保険料納付要件」
障害年金は一種の保険であるため、初診日の前日までに一定の保険料を納めている必要があります。
納付要件のチェック
初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上が納付・免除されていること(または直近1年間に未納がないこと)。
未納がある場合
どんなに症状が重くても、この要件を満たしていないと1円も受給できません。まずは年金事務所や専門家で自分の納付状況を確認しましょう。
3. 「障害認定日」の特例を知る
通常、障害年金は初診日から1年6カ月経たないと請求できませんが、人工透析には特例があります。 透析開始から3カ月: 初診日から1年6カ月経つ前に人工透析を開始した場合、「透析開始日から3カ月を経過した日」が障害認定日となり、その時点から請求が可能になります。

i. 人工透析の治療について
• 通院回数
血液透析を導入した場合、一般的に週に3回の通院が必要となります。
• 継続の必要性
腎移植を行わない限り、生涯にわたり透析療法の継続が必要となります。
• シャントの管理
透析を行うために、腕にシャント(血液の出入り口)を造設する手術が必要となる場合があります。
ii. 労働能力と日常生活への影響
• 労働の制限 障害の状態
透析を受けながらの生活では、「軽作業」や「座業(事務など)」は可能と判断されることが多いですが、週3回の通院時間が拘束されるため、労働には実質的な制限が加わります。
• 自覚症状・他覚所見
資料の事例では、他覚所見として浮腫(むくみ)や貧血が見られることがあります。
• 合併症
長期間の透析を続けることで、続発性副甲状腺機能亢進症などの合併症が指摘される事例もあります。
上位等級、1級への該当性
• 障害等級の目安: 認定基準によると、人工透析療法を施行している場合は、原則として障害等級2級に認定されます。
• 上位等級(1級)への該当性
透析を施行していても、それだけで直ちに1級になるわけではありません。
1級と認められるためには、検査成績が高度異常であることに加え、身のまわりのことも援助がなければできないなど、「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」の極めて重篤な状態である必要があります。
1. 1級に該当するための基本条件
人工透析を行いながら1級と認められるには、障害の状態が「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」である必要があります。
活動範囲の制限
病院内の生活であれば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの、家庭内の生活であれば、活動の範囲がおおむね就床室内(寝室)に限られる程度の状態を指します。
他人の介助
他人の介助を受けなければ、ほとんど自分の用(身のまわりのことなど)を弁ずることができない程度のものです。
2. 評価の対象となる具体的な症状・数値
腎疾患による障害の程度は、以下の項目を総合的に認定します。
検査成績
・血液生化学検査: 血清尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、血清電解質などの数値が評価されます。
・その他の検査: 尿検査、血球算定検査(貧血の程度を確認)などが対象となります。
主要な症状(自覚症状・他覚所見)
・自覚症状: 悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛など。
・他覚所見: 浮腫(むくみ)、貧血、アシドーシスなど。
一般状態
日常生活の制限度合いを示す「一般状態区分表」などに基づき、長期にわたる安静が必要な病状かどうかが判断されます。
3. 合併症の影響
長期間の透析に伴う合併症(例:続発性副甲状腺機能亢進症など)が指摘されている場合でも、透析導入後の臨床経過が「概ね良好」であり、日常生活が寝たきりに近い状態でなければ、1級への増進は認められにくい傾向にあります。
結論として、人工透析で1級と認められるためには、単に検査数値が悪いだけでなく、「介助なしでは身のまわりのこともできず、生活の範囲がほぼ室内(ベッド周辺)に限定されている」という日常生活能力の著しい低下を客観的に証明することが不可欠です。








