障害年金 不支給増加

 2025年3月13日の共同通信社の障害年金の2024年不支給増加の報道があり大きな反響を呼んでいます。具体的には「23年と24年で複数の社労士の協力のもと、計2千件超の申請を集計した結果、精神・発達障害では24年の不支給割合が23年比で2倍に増えていた。」と記事にしました。
 この記事を見た障害年金受給者から当事務所へも、次回更新を控えているが更新は大丈夫だろうかといった問い合わせを多数受けました。

 

令和5年 障害年金業務統計より

新規裁定(障害基礎・厚生)合計 142,209件  
1級 16,603件 11.7%
2級 87,365件 61.4%
3級(厚生年金のみ) 25,903件 18.2%
手当金(厚生年金のみ) 391件 0.3%
非該当 11,947件 8.4%

令和5年 診断書別 決定数(支給・非該当含む) 障害基礎・障害厚生合計

精神・知的障害 99,096件
呼吸器疾患 929件
循環器疾患 4,494件
腎疾患・肝疾患・糖尿病 7,594件
血液・造血器・その他 5,530件
外部疾患 眼 3,034件
外部疾患 聴覚等 3,003件
外部疾患 肢体 22,761件

*上記非該当率については、一人の受給者が複数枚の診断書を用いている場合は診断書ごとに件数が計上されています。

 請求件数は圧倒的に精神障害・知的障害が多いです。


令和5年 新規裁定・障害基礎 診断書別非該当率

診断書の種類 非該当件数 非該当率
精神・知的障害 5,153 7.1%
内部疾患    
呼吸器疾患 217 66.2%
循環器疾患 596 64.7%
腎疾患・肝疾患・糖尿病 414 13.0%
血液・造血器・その他 995 57.8%
外部疾患    
162 10.3%
聴覚等 169 11.3%
肢体 2000 20.0%

*上記非該当率については、一人の受給者が複数枚の診断書を用いている場合は診断書ごとに件数が計上されています。

令和5年 新規裁定・障害厚生 診断書別非該当率


診断書の種類 非該当件数 非該当率
精神・知的障害 1,140 4.3%
内部疾患    
呼吸器疾患 146 24.3%
循環器疾患 197 5.5%
腎疾患・肝疾患・糖尿病 258 5.9%
血液・造血器・その他 766 20.1%
外部疾患    
24 1.7%
聴覚等 72 4.8%
肢体 518 4.1%

*上記非該当率については、一人の受給者が複数枚の診断書を用いている場合は診断書ごとに件数が計上されています。

 今回の報道では主に精疾患での不支給増加が取り上げられていますが、単純に不支給率のみを見た場合、内部疾患・外部疾患の非該当率の方が高いです。

 数値化されにくい精神疾患に比べ、内部疾患や外部疾患の認定基準は認定要領からある程度審査結果が提出前から予測可能です。しかしながら、要領の内容自体が複雑で結局しっかりと理解しないまま提出されている方が多いのではないでしょうか。また精神疾患に比べ、医師自体障害年金の診断書を書く機会が多くなく、書きなれていないことが一因であるかもしれません。


 さらに、障害基礎年金では3級がないことから障害厚生年金よりも非該当率が高くなっています。障害厚生年金での3級該当割合は以下の通りです。  

精神・知的障害 48.5%
内部疾患  
呼吸器疾患 58.9%
循環器疾患 87.5%
腎疾患・肝疾患・糖尿病 15.8%
血液・造血器・その他 62.5%
外部疾患  
20.8%
聴覚等 25.6%
肢体 47.4%

上記の表より、障害基礎年金での受給の難しさがはっきりと表れています。
非常に多くの方が1,2級に該当せず、3級でとどまっているのが現状です。
  


 精神疾患での不支給率の増加については現時点で真偽のほどは不明です。

 昨今、障害年金の認知度が上がってきたことからご自身で請求をされる方が増えています。「精神疾患になったから受給できる」と考え、受診後半年程度で年金請求が可能と考えておられる方もいます。

 「障害年金請求をしたいのに医師が診断書を書いてくれない。どうしたらよいか」といった相談をよく受けます。医師が診断書を書かない理由としては


①障害年金に対する理解がない
②症状が年金を受給できるレベルにない
③障害年金制度について勘違いしている部分がある。

 

 ①と③は医師の理解、考え方に問題がある場合です。
 ②については患者と医師の見解が分かれる部分で、トラブルになりやすいところです。患者自身が思っているほど症状が重くない、もしくは自分の症状をしっかりと医師に伝えられていない場合です。
 基本的に他の疾患に比べ、精神科の医師は診断書を書き慣れている方が多いです。おおよそ、どのように書けば何級程度の年金が支給されるか予測がついています。ゆえに、該当しない患者については作成を拒む傾向にあります。もしくは「書いても障害年金は支給されない」とはっきりと言いいます。
 診断書作成には5千円~1万円程度の作成料がかかります。休職中で働くこともできない患者にとっては大きな負担です。にもかかわらず不支給となった場合、不支給の原因は診断書のせいだということで責められるのは医師です。

 診断書作成において、いかに自分自身の症状を診断書に反映してもらえるかが勝負どころです。もちろん症状が軽いにもかかわらず、障害年金受給のため診断書を悪く書いてもらうなどということは決して許されることではありません。リスクを考えず、そのようなことに加担する医師も社労士もいません。


 一方で他の疾患と比べて精神疾患の症状は数値化できないことも事実です。
 今回の不支給増についても、安易な請求が増えた結果不支給増につながったのか、審査自体に問題があるのか、今後いろいろな情報が出てくるものと思います。
*実際当事務所でも不可解な判定が昨年12月、本年2月(ともに精神疾患)出ております。只今審査請求中。

 

なお、都道県別での非該当率等をご覧になりたい方は下記の統計表を参考にしてみてください。各都道府県でかなり非該当率に差があります。

>>障害年金業務統計(令和5年度決定分)

 

    2024年の業務統計が9月に発表されます


障害年金請求はよく言われることですが、基本的には一発勝負です。ご自身の症状をしっかりと反映されていないような診断書を提出し不支給とならないために

医師に診断書作成依頼をする前にご相談を!

*作成後の診断書修正は非常に難しいです。



2025年04月07日