医師に社労士を通じて依頼してほしいと言われた

 医師に障害年金を請求したいから診断書を作成してほしいと言ったら、社会保険労務士を通じて依頼するように言われることがあります。特に精神疾患の場合は多いように思います。その理由は、主に「認定基準の複雑さ」、「診断書と実態の整合性の確保」、そして「不支給リスクの回避」という理由からです。



1. 精神障害における「等級判定ガイドライン」の複雑さ


 特に精神疾患や発達障害の場合、2016年に導入された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づき、非常に細かな数値基準と「総合評価」によって等級が決まります。


・数値の落とし穴
  診断書の「日常生活能力の判定」の平均値と「日常生活能力の程度」を組み合わせた機械的な目安がありますが、これだけで等級が決まるわけではありません。

・総合評価の重要性
  認定医は、数値目安を参考にしつつ、家族の援助内容、独居の場合の支障、就労における配慮の実態などを詳しく診査します。社労士は、これら「数値以外の加点要素」を的確に書類へ反映させるノウハウを持っています。

 


2. 医師との「コミュニケーション」と診断書の精度


 障害年金の成否を分ける最大の書類は医師が作成する「診断書」ですが、診察時間の短さから、医師が患者の日常生活の本当の苦しさを100%把握できているとは限りません。

・過大評価の防止
  診察室で「頑張って元気に振る舞ってしまう」ことで、実態より「できる」と書かれてしまうリスクがあります。

・整合性のチェック
 日本年金機構は、疾患名、病歴、治療経過、日常生活能力の評価の間に「齟齬や矛盾」がないかを厳しくチェックします。社労士は、実態を正確に医師に伝えるための「参考資料(ヒアリングシート等)」を作成し、不備のない診断書作成をサポートします。

 


3. 就労状況の適切な説明(働きながら受給する場合)


「働いているから受給できない」という誤解が多いですが、実際には職場での配慮(指示の視覚化、パニック時の別室休憩、単純作業への変更など)があれば2級以上の可能性があります。

・「援助がない場合の状態」の主張
 社労士は、現在の就労が「職場の多大な援助があるからこそ成り立っている」という事実を客観的に証明し、労働能力が著しく低いことを審査側に伝える戦略を立てます。

 


4. 複雑な請求パターンへの対応


 以下のようなケースは判断が非常に難しく、個人で行うと返戻(差し戻し)や不支給になるリスクが高まります。

・相当因果関係の主張
 慢性頭痛からうつ病になった場合など、前の病気と後の病気の因果関係を論理的に説明し、有利な初診日を特定する必要があります。

・遡及請求と障害者特例
 65歳を過ぎてから過去数年分を遡って請求する場合や、老齢年金の定額部分を加算させる手続きは、年金制度間の調整が絡み極めて複雑です。

・複数疾患の総合認定
 知的障害に精神疾患が併発している場合、個別に判定せず「諸症状を総合的に判断する」という特殊なルールが適用されます。

 

まとめ

 診断書で障害等級目安「2級相当」の内容が記載されていても、不支給となるケースが増加しています。また、万が一不支給となった場合の不服申し立て(審査請求など)において、医師が深く関与することはほとんどありません。
 診断書を請求するタイミング、初診日の特定、保険料の納付要件など、どれか一つでも不備があれば障害年金の請求は頓挫してしまいます。
 だからこそ、請求手続きをスムーズかつ確実に行うために、医師と請求人双方をサポートする社労士の関与が求められるのです。


>>精神疾患での障害年金請求 診断書チェックポイント

2026年05月18日