AIを活用した、「病歴・就労状況等申立書」作成について

「病歴・就労状況等申立書」は、診断書と並んで障害年金の成否を分ける極めて重要な書類です。現在ではネット上で書き方のコツや記載すべき項目などの情報を容易に得ることができますが、記載内容次第では不支給(等級不該当)となるリスクもあります。

 

生成AIを使うメリット


・記憶していることをメモ書きレベルでまとめる事で文章化できる
・時系列を気にする必要もない
・拙い書き方でも、読みやすく論理的な文章に代えてくれる

 特に長時間字を読んだり書いたりすることがストレスになる精神疾患の方の場合、生成AIによる文章作成は非常に強力な武器になります。

 

 



具体的な作成方法

病名、クリニック名、通院期間を書きだします。
それぞれの期間ごとの、治療内容やその間の症状、病状、日常生活状況、就労状況等を箇条書きにします。



<具体例>

病名 <統合失調症>
【通院歴】
・〇〇クリニック(平成4年4月1日~平成8年4月31日)
・△△クリニック(令和8年5月1日~平成12年8月31日)
・□□病院(平成12年9月1日~平成21年9月30日)
・◇◇病院(平成21年10月1日~現在まで)

【病歴メモ】
平成4年4月1日~平成8月4月31日
 中学校に入ると不登校となった。薄暗い部屋の中でじっとしていた。母親の知人の紹介で○○クリニックを受診。目的の駅で降りられず何度も往復をした。通院は月1回程度。薬を処方された。不眠が続き眠れないことが多かった。気分の変動が激しかった。何もする気になれず家にいた。看護師によく暴言を吐いていた。20代前半の頃知人の紹介で工場で3か月働いた。

平成8年5月1日~平成12年8月31日
 ○○クリニックの医師が大阪市内に開業したので転院した。知り合いの紹介で工場を転々としていた。気分の変動、落ち込みで欠勤することが多かった。病気の事は上司も知っていた。数か月続けて休んでも辞めさせられることはなかった。主治医から自宅に近い□□病院を紹介され転院。

平成12年9月1日~平成21年9月30日
 仕事もせず自宅に引きこもっていた。よくキレていた。何もする気になれなかった。主治医とあわなかったので、薬だけもらいに行っていた。
 数件別の病院を紹介されたが、どこも予約でいっぱいだった。 ハローワークで紹介され面接を受けたがどこも採用されなかった。知人の会社で働いたがすぐに辞めた。眠れない日々が続いた。昼夜逆転していた。

平成21年10月1日~現在
 母がなくなり父と二人暮らしになった。症状がひどい時は父親に暴言を吐いていた。免許を取ろうとしたが医師から止められた。仕事ができなかった。
 令和2年4月に父が死んだ。自宅はゴミ屋敷のようになった。B型の作業所で働くようになった。障害者手帳の事を聞き取得した。同じことを何度も繰り返し考える。時間の感覚が分からなくなる。近隣に住む弟が様子を見に来る。親の財産を切り崩して生活をしている。


AIによる病歴・就労状況等申立書作成例


病歴・就労状況等申立書(統合失調症)


1. 〇〇クリニック 期間:平成4年4月1日~平成8年4月30日
中学入学後から不登校となり、薄暗い自室で引きこもる生活が続いた。母親の知人の勧めで当院を受診。受診の際も、目的の駅で降りられず電車を何度も往復するなど、認知機能や判断力の低下が見られた。 月1回程度の通院で投薬治療を開始したが、不眠や激しい気分変動に悩まされ、看護師に対して暴言を吐くなど感情のコントロールが困難な状態であった。20代前半に知人の紹介で工場に勤務したが、心身の不安定さから3ヶ月で退職に至った。

2. △△クリニック 期間:平成8年5月1日~平成12年8月31日
前医の主治医が開業したため、継続性を重視して転院。知人の紹介で複数の工場を転々としたが、気分の落ち込みや変動が激しく、欠勤を繰り返した。 職場側は病気について理解があり、数ヶ月単位の長期欠勤があっても雇用は維持されていたが、安定して働くことは到底不可能な状態であった。より通院しやすい環境を整えるため、主治医の紹介により近隣の病院へ転院することとなった。

3. □□病院 期間:平成12年9月1日~平成21年9月30日
転院後は就労継続が困難となり、無職の状態で自宅に引きこもる日々が続いた。些細なことで激昂するなど対人関係に支障をきたし、意欲も著しく低下。主治医との関係構築がうまくいかず、対症療法として薬を受け取るだけの通院となった。 ハローワークを通じて再就職を試みたが不採用が続き、知人の会社での就労も短期間で頓挫。昼夜逆転生活となり、深刻な不眠症状が継続した。他院への転院も検討したが、予約が取れず当院での通院を継続した。

4. ◇◇病院 期間:平成21年10月1日~現在
母の他界後、父との二人暮らしとなったが、病状悪化時は父へ暴言を吐くなど家庭内での衝突が絶えなかった。運転免許の取得を希望したが、主治医からは症状を鑑み許可が下りなかった。 令和2年に父も他界し、独居生活を開始。しかし、セルフケアが困難で自宅はゴミ屋敷の状態となった。現在は就労継続支援B型事業所に通所しているが、同じことを執拗に考え続けたり、時間の感覚を喪失したりするなどの症状があり、安定しない。近隣の弟が定期的に訪問し、金銭管理や生活全般の援助を行うことで、親の遺産を切り崩しながらかろうじて生活を維持している。

 申立書として体裁は整っていますのでこのまま清書をし提出することも可能です。

 但し、「提出できること」と「受給できること」とは全く別の問題です。

 

  生成AIでの作成におけるデメリットと限界


・書き手の意図を読み取り補足しますので読みやすい文章となりますが、専門用語や大げさな表現が混在した文章となります。請求人の実際の症状から、かけ離れたものとなる可能性があります。

・診断書と整合性を取るためには、ご自身で修正を行う必要があります。あまりに診断書と内容がかみ合っていないと、申立書に対する信憑性がなくなります。
 (診断書を読み込ませることである程度の修正は可能)

 

 精神疾患の場合、最大の問題は、認定基準やガイドラインを意識して、認定に有利になるよう微妙な調整ができない点にあります。

 AIは、一般的に、この場合どのように記載すればいいか、といった記入例(サイトに公開されている)をもとに文章を生成しますので、どこかで見たような、ありきたりな内容の文章が出来上がってきます。もちろん、具体的なエピソードを盛り込んでいけば話は別ですが。


 そもそも、社労士が過去に取り扱った事例をについてサイトに堂々と上げるようなことは皆無です。個別具体的なものは個人情報保護の観点から安易に掲載するわけにはいかないからです。受給事例は申立書とはまた内容が異なります。
 診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べ整合性を保ちつつ、万が一不服申し立てになった場合に揚げ足を取られないよう、認定基準やガイドラインに準拠したアピールの方法を熟知しているのは事例を多くこなした社労士だけです。

 年金事務所等へ書類を持参した場合、記入漏れ等が無ければ書類一式は受理されます。申立書の記載内容に不備(請求人にとって不都合な内容)があっても、当然ながら、指摘はしてもらえません。

 とりあえずご自身で請求をして、若し不支給なら社労士に不服申し立てを頼もうと考えられているのであれば、それは大きな間違いです。
 そもそも実態からかけ離れた、見た目だけが整った申立書をもとに、その後不服申し立てで1年以上の期間を費やして戦っていくことは不可能です。

 将来的には、AIの質問に答えていくだけで問題のない申立書が作成できる日が来ると思います。そう遠い未来ではない、数年先かもしれません。ただ、今現在の生成AIの性能では、AIが作成した申立書をそのまま使用することは危険です。
 生成AIの利用は文章を完成させためではなく、叩き台を作成するレベル、あくまでも補助的なものとして活用するのが肝心です。

 なお、当事務所では病歴・就労状況等申立書のチェックのみの依頼は受けておりません。
 病歴・就労状況等申立書の作成に不安を感じられましたら、まずはお近くの障害年金を専門に取り扱っている社会保険労務士に相談されることをお勧めいたします。