AIによる病歴就労状況等申立書の作成は便利ですが、それで十分だと考える社労士は少数です(多くの事務所が生成AIでの作成例を扱ってはいますが)。
生成AIは読みやすくきれいな文章を作りますが、一般的な内容に終始しがちです。 現在、保険者(認定医)は「請求人がAIを使っている可能性」や「診断書が患者寄りに書かれている可能性」を前提に、カルテ照会を行うなど、慎重に審査を行っています。
そもそもIT関連に精通した方は別ですが、精神疾患等で体調が悪い中、わざわざ病歴・就労状況等申立書作成のためにプロンプトの勉強をする方は少ないです。
アバウトな指示で生成AIを使った結果、体裁は整っているものの、実際の診断書の内容と食い違いが生じたり、文字数はあるが、内容が薄っぺらい(要は内容のない)申立書が出来上がってくる可能性ががあります。
審査側が重視するのは、AIが作るどこにでも書いてあるような、ありきたりな文章(表現)ではなく、その人だけにしかない個別具体的な経験や体験といった「個人的なエピソード」です。
下記は「発達障害の特徴」をAIに尋ねた際の回答です。
集団行動・ルール変更への抵抗 幼稚園や学校での一斉指示(「みんなで片付けて移動する」など)に従うのが難しく、予定の変更があるとパニックや癇癪を起こしやすい。
片付け・忘れ物の常態化 学校の机やカバンの中が常にプリントや物で溢れかえる。教科書、宿題、傘、財布などの紛失や置き忘れが頻繁に起こる。
授業中の集中維持や着席の困難 授業中にじっと座っていられずに立ち歩いたり、椅子を揺らしたりする。または、外の景色や別のことに気を取られて上の空になる。
学習面の極端な偏り(LD/SLD傾向) 全体的な知能に遅れはないものの、「漢字の読み書きだけがどうしてもできない」「計算や図形問題だけが極端に理解できない」といった凸凹が目立つ。
会話のキャッチボールの難しさ 相手の反応や興味を無視して、自分の好きなテーマ(特定のゲーム、乗り物、歴史など)を一方向的にマシンガントークしてしまう。
空気を読むこと・暗黙の了解の未理解 同年代のグループ特有の「ノリ」や「言わなくても分かること」が理解できず、スクールカーストや友達関係の中で孤立しやすい。 言葉の文字通りの解釈(冗談や皮肉の真に受け)
「ちょっと待って」を何時間も待つと勘違いしたり、友達からの冗談や皮肉を悪意としてそのまま受け止めて激しく怒ったり傷ついたりする。
計画性の欠如によるパンク 夏休みの宿題や定期テスト、大学のレポートなどのスケジュール管理ができず、締め切り直前になってフリーズまたはパニックになる。
アルバイトや実習での挫折 接客時の臨機応変な対応や、マルチタスク(注文を取りながらレジを打つ、状況を見て優先順位を変えるなど)ができずにパニックになる。
「普通」への擬態(マスキング)による過度な疲弊 周囲から浮かないように必死に周りの行動を観察して合わせようとするため、学校から帰宅した後に泥のように眠るなど精神的な消耗が激しい。
このようなものはいくらでも生成AIが作成してくれます。
これを利用すると病歴就労状況等申立書は一瞬で完成します。何度か修正をしても30分程度です。
果たしてこれで受給権を得ることができるでしょうか?
年間何十万円という年金の受給権は、こんなに手軽に手に入るものでしょうか?
障害年金の書類審査で求められているのは「提出された書類のみで、本人の日常生活能力や労働能力の障害程度を客観的に評価すること」ができるかどうかです。
うつ病の方の病歴・就労状況等申立書に、「一日中気分が落ち込む、理由もなく悲しい、虚しい。」「常にイライラしたり、落ち着きがなくなったりする。」等のありきたりな精神症状や身体症状を記載したところで意味はありません。
その結果として、○○さんとして、日常生活や職場でどのような苦労をこれまでにされてきたか、個別具体的な(少なくとも生成AIでは作成できないような)エピソードをしっかりと記載していく必要があります。
*うつ病での受給は特に難しいです。
障害年金の審査では、認定医が1件あたりにかける時間は数分です。
ゆえに、申立書にいかに印象的な内容を盛り込めるかが重要です。
しかし、現在のAIが作成する申立書は無難でその人らしさが見えず、マイナス評価はされなくともプラス評価をされることは少ないと思います。
診断書だけが立派(目安2級相当)で、個別具体的な記述がない場合、カルテ照会をかけられる可能性が高くなります。
カルテの内容については、これまでの経験上、請求人に不利な内容が書かれている事が多いいです(診断書とカルテでは作成主旨が根本的に異なります)。特にうつ病の場合、病巣期があるため、カルテのポジティブな内容のみを抜き出し、不支給の理由とされることが多いような印象です。
昨今SNS当で障害年金の存在を知り請求を考えておられる方の多くは、3級非該当もしくは「3級乃至は2級」の方です。
「2級と3級」の境界線上にある方が2級相当として認められるには、生成AIが作成した申立書を提出することは非常にリスクを伴います。
「2級乃至は3級」の方が不支給になった場合の再請求は、さらにハードルが上がります。
不服申し立てがある、と考えている方もいますが、処分が取り消される率は10~15%程度です。それも、1年半~2年の歳月を要します。
不支給なら社労士に頼もうとする方もいますが、不服申し立てから受任する社労士は非常に少ないです。
そもそも、内容の薄い病歴・就労状況等申立書を提出した場合、それをもとに戦うことになります。申立書はご自身で作成し提出したものです。後からあれやこれやと勘違いをしたといって、書かれた内容を否定することはできません(付け加えも意味はありません)。
どのような内容が保険者(認定医)に評価されるかは、数多くの審査請求をこなし、保険者と向き合ってきた社労士にしか分かりません。
病歴就労状況等申立書を作成しようとした際に、ご自身で訴えたい内容、認定医に知ってほしいエピソードが溢れるように出てくる方はご自身で作成が可能かもしれませんが、「何を書いていいかわからない」という方は、最初からお近くの障害年金を専門にする社会保険労務士に依頼された方が無難です。
「社会保険労務士に依頼をすれば必ず受給できるのか」とよく聞かれますが、「はい」とは言えません。
ただし「ご自身で請求されるよりも受給確率は高くなる」事ははっきりしています。そうでなければ、専門家を名っている意味がありません。
将来にわたって何十万、時には何百万という年金の受給権を獲得するために、いろいろとご自身で悩まれる前に、「知識」と「経験値」を持つ社会保険労務士に、まずは一度ご相談されてみてはどうでしょうか。








