AIを活用して診断書のチェックは可能か?

 障害年金の請求手続きにおいて、最も重要な書類が「診断書」と「病歴・就労状況等申立書」です。
 もし、この2つの書類が生成AIだけで完璧に作成できるようになれば、障害年金は「誰でも簡単に請求できる手続き」になるかもしれません。
 しかし、ここには大きな壁があります。「病歴・就労状況等申立書」は本人がAIのアドバイスをもとに、ご自身で作成できますが、「診断書」を作成するのはあくまでも医師だからです。
 当然ですが、本人が手を加えることは一切できません(勝手に書き換えると有印私文書偽造罪などの重い罪に問われます)。
 仮にAIが「〇〇と書けば2級相当になります」と教えてくれたとしても、「その通りに書いてください」と言って応じてくれる医師はまずいません。
 診断書は、患者側の希望ではなく、カルテの記録と、医師の医学的判断に基づいて作成されるものだからです。
 AIがどれだけ進化しても、医師との信頼関係や、正しい実態をカルテに反映してもらうための「事前の準備」が不可欠な理由はここにあります。

 診断書の作成依頼をする際にご本人にできることは、事前に、日常生活の困難さを伝えるための「日常生活報告書(メモ)」を作成し、医師に手渡しておくことです。
 *SNS等でこれらの情報は拡散されているので多くの方はごぞんじでしょうが。

 

「出来上がった診断書をAIに見せたら、等級判定ができる?」

 結論から言うと、答えは「目安(〇〇級相当)の提示が限界」です。

 AIが「100%受給できます」と言い切ることはありません。

 以下は、精神疾患の診断書20数枚を実際にAIに読み込ませて検証した上での感想です(ご本人の同意を得たうえで、かつ個人情報、日付はすべて消去したものを使用)

 AIは診断書を全体的に評価して、というよりも「日常生活能力の判定と程度」によって目安等級を出してきます(医師と同じです)。
 
 次に就労状況と日常生活活動能力について
 就労については、「無職」か「就労しているか」。就労している場合は、どの程度の援助を受けているのかという点をみます。この点ガイドランを読み込ませておけばより精度の高い判定ができるかもしれません。
 ただし、そもそも医師が、ガイドラインを理解していなければ意味はありませんが。

 日常生活については、「同居」「援助」の有無、日常生活を送るうえでの制限の有り無しを参考に判定が行われます。家族等のサポートの有無を当然ながら考慮されます。

 以上、生成AI で判定できるのはここまでです。診断書⑦「発病から現在までの病歴及び治療の経過、内容、就学・就労状況等、期間、その他参考となる事項」⑧「診断書作成医療機関における初診時所見」⑩「障害の状態」イ「左記の状態について、その程度・症状・処方薬等の具体的記載」等は一人ひとりで障害の状態等が異なり、一般的に何が「正解」かを判断することができません。

 仮に、AIが診断書⑩の欄に、もう少し「○○」のような内容の記載があれば2級相当になる確率が上がりますといった場合、それで医師が修正してくれるでしょうか?
AIが言ったから「診断書を書き直して下さい」と言って診断書を修正する医師はいません。(いたらいたで驚きですが)。


 

 要は、診断書をAIでチェックをしたところで、その結果をもとに医師が診断書を修正してくれるわけではないということです。

 

診断書はただ書いてもらえばいいだけではありません

「医師は病気を治すプロですが、障害年金の診断書に精通しているとは限りません」 どちらかといえば、作成に不慣れだったり、自己流で記載されていたりする医師が多いような印象です。もちろん医師に悪意は全くありませんが、何気なく書かれた「一言」が、審査において命取りになることも事実です。


  だからこそ、ご自身が診断書やガイドラインを熟知した上で、医師に修正を検討してもらうことは非常に有効です。
 どちらとも受け取れる曖昧な表現を明確にしてもらう工夫は、受給の可能性を大きく左右します。 医師に修正を依頼するときの最大のポイントは、「診断書の記載要領(国が定めた公式な基準)」をもとにご相談をされるということです。一方的にご自身の要求を突きつけると、必ず医師は態度を硬化させます。

 事前に、医師に渡す「日常生活状況」をまとめる際の注意点は、AIのアドバイスをそのままコピペして貼り付けるようなことは避けることです。AIのアドバイスのまま作成された「日常生活能力」の一覧は、医師からすると、医学書に乗っている症例のオンパレードです。何も参考になるものはありません。

 さらに言えば、診察を受けている時間はどの程度でしょうか。たいていは5分前後です。一体、医師にご自身の障害の状態(日常生活の状況)がどこまで伝わっているでしょうか。そこに、○○病の症例のようなメモ書きを渡して、記載要領を理解していない医師が診断書するのです。内容のない(内容の薄い)診断書が出来上がるのも無理はありません。


 現状、AIに診断書をチェックさせることは可能です。
 しかし、できるのは「記載ミスや記入漏れの確認」くらいだと言えます。 AIがどれだけ「書類の整合性が取れている」と判定しても、それが「認定医や保険者が納得する整合性」と同じである保証はありません。
 精神疾患の審査は、診断書や申立書のすべてをもとにした「全体像による総合評価」でおこなわれます。
 書類上の数字や言葉の辻褄が合っていても、認定医が「何かがおかしい」と違和感を抱けば、容赦なくカルテ照会が行われます。この「何かがおかしい」の正体を嗅ぎ分けるだけの情報とノウハウを、現在のAIは持っていません。

 

最後に:障害年金のご請求で悩まれている方へ

 障害年金の手続きにおいて、AIは強力な補助ツールにはなりますが、現時点では、万能の解決策を提示してくれるわけではありません。


・「医師に自分の状況がうまく伝わっていない気がする」
・「出来上がった診断書の内容に違和感があるけれど、どう医師に伝えたらいいか分からない」
・「書類全体の整合性が本当に取れているか不安」
  そんなときは、一人で悩まずに、ぜひ障害年金専門の社会保険労務士にご相談ください。 AIには見抜けない「書類の奥にある問題点」を精査し、あなたの状況に合わせた最適な方法を提案し、受給に向け全力でサポートをいたします。